家に現金を置いていると、どこにしまうのが安全なんだろう、と考えることがあります。銀行に預けるほどでもない額でも、まとまってくると置き場所が気になります。
先に言ってしまうと、家に置く現金で本当に困るのは「見つかること」より「無くなること」です。盗まれる、燃える、水に浸かる、どこにしまったか自分で忘れる。どれも実際に起きます。
なので、この記事は「見つからない場所」を10か所並べる記事ではありません。家に置くと何が起きうるのか、そのうえでどう置くか、という順番で見ていきます。
まず確認したいのは、現金の場所より窓と玄関です
家に置いたお金で一番心配なのは、やっぱり泥棒ですよね。警察庁の統計では、令和7年の侵入窃盗の認知件数は4万7,233件(前年比4,197件・9.8%増)でした。窃盗全体の発生場所としては、商業施設や一戸建住宅が多いとされています。
侵入の手口は、住宅の形で少し違います。警察庁の「住まいる防犯110番」に載っている上位3つは次のとおりです。
- 一戸建住宅:1位 ガラス破り、2位 無締り、3位 合かぎ
- 共同住宅(3階建以下):1位 無締り、2位 ガラス破り、3位 合かぎ
- 共同住宅(4階建以上):1位 無締り、2位 合かぎ、3位 ガラス破り
侵入口は、どの形の住宅でも窓と表出入口が非常に多い、とされています。
ここで注目したいのは「無締り」がどの住宅でも上位に入っていることです。鍵をかけていない窓や玄関から入られている、ということです。警察庁も「日頃から出入口や窓には確実に施錠をする習慣を身につけましょう」と呼びかけています。
つまり、現金の隠し場所を工夫するより、窓と玄関の施錠のほうが先です。まず侵入されにくくすることが、現金の置き場所を考える前の基本です。隠し場所をいくら工夫しても、入られてしまえば時間をかけて探されることはあります。
燃えた紙幣は、残り方で金額が変わります
火事になったら、しまっていたお札はどうなるんだろう、と気になる人もいると思います。ここは日本銀行がはっきり基準を出しています。
銀行券が破れたり燃えたりした場合、表と裏の両面があることを条件に、残った面積で引き換えの金額が決まります。
- 面積が3分の2以上残っていれば、全額として引き換え
- 面積が5分の2以上3分の2未満なら、半額として引き換え
- 面積が5分の2未満は、銀行券としての価値は無く失効
1万円札なら、3分の2以上残っていれば1万円、5分の2以上3分の2未満なら5千円になります。灰になった場合も、その灰が銀行券であることが確認できれば面積に含めてもらえます(2026年10月時点・日本銀行のページより)。
これは心強い基準ですが、裏を返すと、燃え方によっては半額になるし、価値が無くなることもあるということです。預金なら、通帳が燃えても残高は消えません。ここが家に置くことの一番の違いです。
水に濡れた場合も、無理に広げたりせず、できるだけ形を崩さないように扱いたいところです。傷みが大きい場合は、日本銀行で引換えの対象になることがあります。ただ、流されてしまえば手元には何も残りません。
「しまった場所を忘れる」は、わりと起きます
盗難や火事ほど目立ちませんが、意外と見落としやすいのがこれです。
丁寧に隠すほど、普段の生活から遠い場所になります。使わない食器の中、天袋の奥、本の間。1年も経つと、自分でも思い出せなくなります。家族が片付けたり、引っ越しや施設への入居でまとめて処分されたりすると、そのまま消えます。
隠した本人しか知らない場所は、本人が元気なうちは問題になりません。でも急に入院したときに、家族が生活費を出そうにも場所が分からない、ということは起こりえます。
誰か1人には「何かあったらここを見て」と伝えておく。金額まで伝えなくても、信頼できる人に保管場所だけ知らせておけば、「誰にも見つけてもらえない」という心配はかなり減らせます。
それでも家に置くなら
それでも、災害のときに現金が要る、通帳やカードがすぐ使えない状況に備えたい、と思うのは自然なことです。手元に置くなら、置き方で差が出ます。
分散させる。一か所に全部をまとめるより、少額ずつ用途を分けて保管したほうが、ひとつの事故で全部を失うリスクは下げやすくなります。
紙に包んで、密閉できる袋に入れる。水に濡れると紙幣はくっついて破れやすくなります。チャック付きの袋に入れておくだけでも違います。
すぐ持ち出せる場所にも少し置く。災害時に備えるなら、奥にしまい込んだお金は使えません。避難袋に少額を入れておくほうが、目的には合っています。
家族にも分かる場所にする。前の節のとおりです。「絶対に見つからない場所」は、自分と家族にも見つからない場所です。
金庫を買う場合は、耐火と防盗のどちらを重視した製品かを、買う前に商品の説明で確かめてください。火事に耐えることと、こじ開けに強いことは別の性能です。小さくて軽い金庫は、置き方によっては持ち運べてしまう点も気にしておきたいところです。全国銀行協会は、セーフティボックスの暗証番号について「カードの暗証番号とは違うものに設定する」よう案内しています。金庫を置くなら、暗証番号の使い回しもやめたほうがいいです。
結局、どのくらいまで家に置くか
いくらまでなら家に置いていいのか、迷いますよね。ここは人によって違いますが、考え方はひとつです。
無くなっても生活が崩れない額まで。盗まれても、燃えても、「困るけれど立て直せる」範囲に収めておく。それを超える分は、預金のほうが安全です。盗まれても燃えても残高は残りますし、場所を忘れても記録が残ります。
逆に、預金にすると使ってしまうから手元に置いている、という場合は、置き場所の問題ではなく使い方の話になります。引き出しにくい口座に移すほうが、たぶん効きます。
まとめ
家に現金を置くときに考える順番は、こうなります。
- 窓と玄関の施錠(侵入窃盗はどの住宅でも無締りが上位)
- 1か所にまとめず分散させる
- 水と火から守る(燃え方によっては半額・失効になる)
- 信頼できる誰か1人には場所を伝えておく
- 無くなっても立て直せる額に収める
隠し場所を増やすほど安全になるわけではありません。むしろ、置き場所を増やしすぎると、自分でも管理しにくくなります。家に置く理由と額を決めてしまえば、置き場所の悩みはだいぶ小さくなります。
















